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「 第9弾 」自国民雇用促進政策 | 中東ビジネスへのビジネスコンサルティング

 ゼンエルディーンインターナショナル株式会社は、フロンティアマーケットへの海外進出を検討されている日本企業のビジネス拡大や海外進出を全面的にサポートするビジネスコンサルティング会社です。

中東地域(GCC) 向けに輸出消費財の販路拡大を計画されていらっしゃるお客様に最新マーケット情報をお伝えします。

過去記事

第1弾 中東地域への販路拡大について

第2弾 市場調査について

第3弾 GCCでの代理店起用の留意点

第4弾 現地事務所開設と駐在員派遣

第5弾 企業にとってFZに進出する意味・メリット

第6弾 GCC内の関税の規約について

第7弾 代理店起用の必要性

第8弾 販売代理店候補の選定


今回は、第9弾として「自国民雇用促進政策」についてご紹介致します。




自国民人口が多く(2020年度統計 約 3,481万人)、総人口中の自国民比率が約7割と非常に高いサウジアラビアは、GCC(注)の中でも最も強力に「自国民雇用促進政策」(サウダイゼーション政策)を進めています。

2011年に「Nitaqat」と呼ばれるサウジ人雇用法が施行されました。これは、業種ごとに決められた一定のサウジ人雇用比率の達成を企業に義務付け、それを満たせば優遇措置を、又、違反すればペナルティーを 課す制度であり、政府の真剣さが窺われます。

サウジアラビアでは、2015 年に労働法の大幅な改正が行われた後、2019 年にもさらなる 見直しが行われました。いずれの見直しでも、サウジアラビア人の従業員の権利の拡充に力点 を置きつつ、国際基準に近づくことが意図されています。

サウジアラビア政府が 2016 年 5 月に発表した脱石油化に向けた国家戦略「サウジ・ビジ ョン 2030」の下、国内の社会制度の現代化、合理化が急速に進展する一方、雇用環境では サウジ人雇用促進政策の規律も厳格化が進んでいます。現在、の失業率を2030年までに7%に改善することを公表して居り、 今後、同政策は一層徹底されることが予想されます。

進出企業が 経営計画、経営判断を行う上で、労働法の主たる内容を正確に把握することは、事業リス クを最小化する観点で、以前にも増して重要になりつつあります。

以下に、その背景と現状に就き補足します。

1. 2度のオイルショックと富裕国家の誕生

- アラビア湾岸 6ヶ国(サウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦、カタール、オマーン、バーレーン)は 60年代から石油の重要な生産地であったが、採掘された原油はオイル・メジャー経由で国際市場に流通しており、 この地域が世界の関心を集めることはなかった。1973年に第4次中東戦争が勃発した際、OPEC加盟国であるこれら湾岸 6ヶ国は、米国(敵対するイスラエルを支援)の同盟国に対して石油の禁輸措置(“ 石油戦略 ”)を発動した。 これにより、原油価格は、1973年12月末のUS$5.12 / バレルから、1974年1月には、US$11.65 /バレルに高騰した。(第1次石油ショック)この事件により、アラビア湾岸 6ヶ国は一気に世界の注目を集める地域となった。

- 又、1979年に起きたイラン革命により石油の ” 供給危機 ” が生じたことから、78年11月にUS$12.7 /バレルであった価格は、79年末には更にUS$24 /バレル、1980年4月にはUS$28 /バレル高騰した。 その後は、若干落着きを取り戻し90年末までUS$20前後で安定的に推移した。70年代半ばと79年に生じた 2 度のオイルショックによる石油価格の高騰とそれに続く価格の安定期を通して、湾岸産油国の財政収入は急増し、 何れの国もインフラ開発や石油 / 石化産業の整備に邁進することとなった。斯様な急激な経済開発のあらゆる実働の現場を担ったのは、主として南西アジア / 東南アジア / 近隣アラブ諸国からの出稼ぎ労働者たちであった。

2. 「実働を担う出稼ぎ外国人」「裕福な自国民」と高い失業率

- 突然始まった経済開発には、多数の労働者と実務者が必要となった。然し、これら湾岸 6ヶ国では何れも自国民の人口は相対的に少なく、未熟練・熟練労働者も技術者・専門家も全く不足しており、南西アジア / 東南アジア / 近隣のアラブ諸国から供給された大量の出稼ぎ人が、あらゆる分野で、必要とされる実働を担うこととなった。

- それとは対照的に、自国民は、締切や競争に迫られる仕事 / 工場の製造現場や建設工事現場等といった苛酷な労働環境での仕事に従事する必要がない、という環境で1970年代後半以降 30年以上ものあいだ過ごしてきたとも言える。

- オイルショック後の財政収入増がもたらした急速な国家経済の発展に伴い、医療水準の向上と医療の普及は辺境に到るまで急ピッチで進んだ。又、高等教育まですべて無料の教育も短期間に拡充されて来た。

その結果、「自国民の著しい人口増加と高学歴者(高卒 / 大卒)の急増」をもたらしている。

3. GCCの産業構造の特徴と公共部門への雇用吸収

- 本来、多くの雇用を創出・吸収すべきは製造部門であるが、GCC諸国共通の特徴として、産業構造は、石油・ガス及び石油化学産業(=「装置産業」)主体のモノカルチャー的構造(他にも、電炉製鉄産業、アルミ精錬産業、 セメント産業等あるがいずれも「装置産業」)であり、多くの雇用を生まない。その結果、各国とも自国民(しかも高学歴者)の失業率の増加が社会問題化している。中でも、自国民人口の多いサウジアラビアでは、 この問題はとりわけ顕著、且つ、深刻である。

- 各政府は、失業問題を緩和する為に、潤沢な財政に支えられ拡大を続けてきた公共部門(政府部門)にそれら自国民若年勤労層を専ら吸収してきたが、2000年代初めにはそれも飽和状態に近づいた。

4. 民間部門での自国民雇用の難しさ

- 各国とも、近年、民間部門 / 非石油部門の発展を促す政策(=産業多角化政策)の推進を謳い、民間企業も政府政策に沿って自国民若年層の雇用に努めてきた。ところが、70年代半ば以降、「生計の為に、過酷な労働も厭わずこなす」「モノを創り出すことに喜びを感じる」といった機会を他の工業社会ほどには経験せずして成長してきた今日の就業年齢層の多くは、民間企業の目には、労働技能・勤労意欲の面で速戦性が不足していると映る為、競争に勝ち抜かねばならぬ民間企業は、より高い生産性とより安いコストを求め、外国人出稼ぎ労働者への依存度の低下は政府の期待ほどにはなかなか進まず」その結果、自国民若年層の失業率は高止まる傾向にあった。

5. 自国民雇用促進政策の導入

-斯様な背景から、2000年代に入り、GCC各国では「自国民の雇用を促進する政策」の導入が検討され始め、Emiratization / Omanization / Kuwaitization 等々の言葉がメディアに登場し始めた。GCCの殆どの国は自国民比率が非常に小さく、まだ公共部門の雇用吸収余力もある故、深刻な社会問題化には至って居らず、一部業種を除き、厳しい運用はされていない。

-対照的に、サウジアラビアでは、全人口 3,481万人中サウジ人は約 2,367万人(約68%)と、自国民比率が非常に高く、毎年 30万人近く輩出される高等教育修了者の就職難(=失業率の高さ)の深刻さは際立っていた。そこで、サウジでは、2005年に発布された新労働法により、一部業種でのサウジ人雇用を義務付ける規制が導入された。然し、労働の生産性とコストの格差から、民間企業のサウジ人雇用はなかなか進展しなかった。

-これに業を煮やした政府は、2011年6月に自国民優先雇用法「Nitaqat Program」を施行。これは、業種ごとに設定されたサウジ人雇用比率の達成度合いに応じ、「プラチナ」「グリーン」「イエロー」「レッド」と企業を評価・分類し、「高達成率企業には“ インセンティブ ”」を、「達成度の低い企業にはペナルティー」を与える制度である。この厳格な適用により、2013-14年には1万社を超える中小企業が事業撤退・倒産を余儀なくされたという報道もあった。

-「雇用の受け皿となる製造業の誘致」という要請を満たすには、「生産性が高くより低コストの出稼ぎ外国人の活用」は、必要条件であるが、政府は敢えて「失業問題解消の為には、自国民若年層雇用の強要」との労働政策を選択。それにより、「製造業の競争力強化にブレーキが掛る」という結果に陥るという矛盾が顕在化している。政府は、このサウジ人雇用促進策の浸透の為に、サウジ人従業員の職業訓練費用の公的負担や研修期間中の給与補助等の企業支援策も用意している。2014年後半以降、長引く油価低迷の影響により、サウジの石油 / ガス / 石油化学関連業種、及び、財政投資関連の支出が絞り込まれており、生産活動・消費共に冷え込みつつある。 斯様な経済環境下、特に従業員一人当たりの生産性が生命線である中小企業にとっては、「高コスト、低生産性」の自国民雇用の強要は、より大きな負担となって居り、中小企業の疲弊度は増しているとの報道もある。

6. 一般的な採用


雇用主は、サウジアラビア人以外を雇用する前に、すべての欠員についてサウジアラビア 国民を優先的に考慮する義務を負います。すべての求人情報は人材開発基金(HRDF)に掲示さ れ、採用主体の種類に応じて、7~45 日間公示される。サウジアラビア人以外が採用される前に、人材開発基金に登録されている失業中のサウジアラビア人が応募する機会を提供することが求められています。 ただし、民間企業は新たな就労許可や滞在許可証(Iqama)の手続き期間を短縮することが可能になっています。外国人の従業員は、就労許可に規定されている内容の職業および業務に従事する ことが認められています。

サウジアラビアでは、民間セクターにおけるサウジアラビア人の雇用に関する規制や監督監視が年々厳格化されており、自国民のみを対象とする特定の職種が規定されています。人 材・社会発展省は、サウジアラビア人のために特定の職種を確保することに厳格であり、同職種のためにサウジアラビア人以外に就労許可を発行する可能性は非常に低い。

7.雇用に関する一般的な規律


(a) すべての雇用主は規模に関係なく、少なくとも 1 人のサウジアラビア人の従業員を 雇用することが義務付けられる。また、 雇用主が人材・社会発展省に法人登録をしてアカウントを管理する際、サウジアラビア人の従業員が担当、与することが求められる。

(b) 特定の役割(職種)はサウジアラビア人のみが遂行できる。主に、人事や財務管理 などの管理役割に限定されるが、ガードマンや秘書なども含まれる。

(c) 雇用主は外国人の従業員を雇用する前に、サウジアラビア人を雇用する義務を負う。

(d) 雇用主はすべての欠員に関する情報を HRDF に掲示し、サウジアラビア人以外を採用する場合、事前に同職種で登録されている失業中のサウジアラビア人に通知する必要がある。雇用主は集団ビザ申請を行う前に、HRDF を通じて従業員募集の情報を公示する必要がある。

(e) 一方、人材・社会発展省 は 2019 年 11 月、サウジアラビア人の採用について緩和した。法人設立後直ちに雇用すべきとしていた義務を見直し、12 カ月間の猶予期間を設けた。同制度は 2019 年 12 月に施行された。

8.まとめ


少子高齢化による市場縮小や、経済のグローバル化に伴い、「海外展開」は日本企業の戦略上の優先課題となっています。一方で、言語や商習慣の壁、ブランドの認知度や法律、貿易、パートナー開拓など… 「海外展開」のハードルはまだまだ低くはありません。


ゼンエルディーンインターナショナル株式会社は、ビジネスコンサルティング会社として、中東向けビジネスの実績を多数有し、弊社の経験豊富な現地スタッフが 、お客様の海外展開・販路拡大・営業支援を計画から実行まで伴走型で成功までを全面的にサポートして参ります。


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